「あっ! ウシツノだあ! それにシャマンとクルペオも」
夜明け前、ウシツノはシャマンとクルペオに連れられてネズミの隠れ家に入った。
スラム街の一角にある集合住宅、その最奥の一室であった。
「おう、ハクニー……だよな?」
返事したシャマンだがハクニーの変化に一瞬自信を無くす。
「お主、ケンタウロスであろう?」
クルペオも驚く。
「うふ、この脚でしょ? 実はねぇ……ってウシツノ?」
「あ、ああ。ハクニー、脚長いな……」
「ええっ?」
「おいウシツノ、もうそこまで気にすんなって。切り替えてけ」
「うむ、シャマンの言う通りじゃ。夜通し探し回ってみつからなかったのじゃ。次の手を考えるしかあるまい」
「袋が裂けていたことに気付かなかったのはお前だけじゃねえんだ。ひとりで責任感じるんじゃねえぞ」
「なにかあったの?」
「どこかに箱を落としちまったんだ」
「そうなんだ。箱……って箱ォッ?」
目を剥いてハクニーが声を張り上げる。
「声がでけぇよ……」
「箱ッて、パンドゥラの箱? 無くしちゃったの?」
「すまん」
ハクニーにガクガクと両肩を揺さぶられながら、ウシツノはうなだれる。
「仕方ねえだろ。ないもんはねぇんだ。ネズミの奴に探してもらうしかねえだろ」
「そこまで信用してよいのかのう」
「どうせオレたちが箱を持ち帰ったことまでもう知ってるんだ。今更だろ」
それで三人はこの隠れ家へ戻り、レッキスはひとりウィペットの様子を見に闇医者の元へと向かったのだ。
「ハクニー。アカメはどこにいるんだ?」
ウシツノの問いにハクニーは出掛けていると答えた。
「ここに来てから色々調べて回ってるみたいでさ、今日は朝帰りみたいだね」
「そうか……」
こんな時、アカメなら次にすべき行動を示唆してくれる。
アマンならあれこれ悩まずとっとと行動を起こしている。
(オレはいまだに駄目なままだな)
ガタッ!
そのとき突然入口から物音がして全員に緊張が走った。
すぐさまそこへ向かうと扉の外でギワラが倒れていた。
「ウシツノ! クルペオ!」
異常を察知したシャマンはクルペオにギワラを指差し、ウシツノと二人で表へと向かった。
朝陽が登り始めている。
入り組んだ路地に人影はなく、周囲を慎重にうかがってみるが変わった様子はない。
「誰もいねえな」
警戒しつつも中へと戻る。
クルペオとハクニーが倒れたギワラの様子を見ているところであった。
「どうなんだクルペオ?」
「これはマズイかもしれぬ」
ギワラは意識を失っていた。
白蝋のように顔色が悪く、小刻みに震えてもいるようだ。
手首の脈をとると異様な拍数を数える。
「ケガではないのか? 病を患っていたようにも見えなかったが」
ウシツノの問いにコクンとクルペオがうなずく。
「なにか盛られたのかもしれぬ。どちらにせよここでは埒が明かぬ」
「よし、あの闇医者の元へ運ぼう」
シャマンが広い背にギワラを背負う。
「コイツがこんな目に遭うってことはネズミにも何かあったかもしれねえ。ここは危険だ。ハクニーも一緒に来い」
「う、うん。でも、アカメがもうすぐ帰って来るかも」
「チッ。どこに行ってやがんだアイツ」
「オレが残る」
ウシツノがそう言って刀を外し壁に背を預け座り込んだ。
「オレとハクニーは残る。急いでギワラを連れて行くといい。アカメが帰り次第オレたちも向かう」
「お主ら闇医者の場所がわかるのか?」
「メインクーンが知ってるでしょう? あの人ももうすぐ帰って来るよ。いつもお昼前に帰って来るもの」
「そうか、メインクーンもいたな」
ハクニーとウシツノの案にシャマンも乗ることにした。
「あまり目立ちたくねえ。通りに人出が増える前にいくぞ、クルペオ」
「うむ」
「用心怠るなよウシツノ」
「ああ」
表を警戒しながらシャマンとクルペオはギワラを担いで出て行った。
それを確認してハクニーは扉を閉めカギをかける。
「ウシツノ」
「なんだ?」
「少し寝た方がいいよ。なんだかすごく疲れてるみたい」
「そうもいかない」
「そう……」
「ハクニー」
「なに?」
「ありがとう」
「……うん」
こんな時シオリがいてくれれば。
二人ともに同じことを考えていたが、二人ともにそれを声には出さなかった。
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「ギワラを担いだ二人組が出て行った。ショウジョウの大男とルナールの女だ。カエルは出てこない」
「よし、ここはオレが見張る。お前はあの二人を追え。お前はオーシャン様に伝えろ」
「はっ」
「へい」
路地を駆けていくシャマンとクルペオを隠れて見張っていた三人組がいた。
そのうちの二人が路地裏の陰へと消える。
「さて、どっちだ? どっちが箱を持っている?」






