手も足も出なかった。
変身したズアに対し、まともな攻撃を当てることすらできなかった。
頭は混乱し、体は鈍り、痛みすらもどこか他人事だった。
気付けば姫神の変身は解け、ミナミは地に伏していた。
どこまでも続く細やかな砂が近い位置で視界に広がる。
いや、そこに獰猛で凶悪な太い足がそびえたっているのが見える。
辛うじて見上げると、獅子と山羊、そしてドラゴン、計三つの顔、六つの目がミナミを冷たく見下ろしていた。
中心にある獅子の顔がしゃべった。
その声には落胆の様子がありありとうかがえた。
「この程度とはな。貴様には、姫神としての覚悟がなさすぎた」
覚悟――?
「〈心〉め……つまらぬ娘を選んだものだ」
こころ――? それって確か……。
「あ、あなたは、いったい……」
ミナミの口から弱々しい声がズァの耳に届く。
「言ったであろう。我はお前たち姫神に対し、常に敵対する者。まさか何の妨害もなく好き勝手にこの世界を蹂躙できると思っていたのか」
世界を蹂躙――? そんなつもりない……。
「フンッ!」
ズァの姿が人間然とした元の偉丈夫に戻る。
すでに戦いは決着している。
ミナミにもう抗う力は残されていなかった。
ズァは身を屈め、倒れているミナミの体を肩へと担ぎ上げた。
何の抵抗もできない。
「やっ――! やめて……」
体をこわばらせ、身をすくめる。
すでに姫神であることも、冒険者であることも忘れて、自分がただの無力な小娘でしかないと悟り、心の底から畏怖していた。
「なにする、の……」
あらゆる恐怖体験がミナミの脳裏をよぎった。
心がそれに耐えられず、思考を強制終了させようとして、ミナミは意識を失ってしまった。
ズァが歩き出す。
意識を失ったまま足元に倒れているシャマンたち五人のことは一切顧みることもなく、暗闇に向けて歩を進めた。
「雑魚に用はない。捨てておけよ、ヴァルフィッシュ」
どこへともなく命令を発する。
次いで、
「ゴルゴダへ飛べ」
その言葉を最後に、ミナミを担いだズァの姿は消えた。
そして砂が流れ出す。
流砂となって倒れたシャマンたちを押し流した。
気を失っている一行は流れに逆らうこともなく、次々と砂に飲み込まれていく。
シャマンが、ウィペットが、クルペオが、メインクーンが、その姿を没していく。
最後にレッキスが流された。
その進路上に一振りの剣がある。
ミナミの神器、土飢王貴ライドウだ。
剣はレッキスの懐に流れ込むと、共に砂の中に没していった。






