【第201話】ペニヴァシュ山

 女盗賊ギワラ以外、全員亜人で構成された一行が分け入るペニヴァシュ山は、ウシツノとアカメをとても懐かしい気持ちにさせてくれた。
 それは云わずもがな、彼らの故郷カザロ村を包むゴズ連山に似ていたからである。

「こんなところに箱があるってのか」

 黙々と歩き続ける一行がたどり着いたのは、鬱蒼とした木々に包まれた朽ちた遺跡であった。
 いくつもの石を積み上げて造られた建造物と、周囲にはヒトの背丈の何倍もの高さでそそりたつ石像が並ぶ。
 その石像はヒトなのか魔物なのか、恐ろし気な仮面をつけたその姿形からは判断しずらいデザインをしていた。

「これはすごい。いったいいつ頃建設されたものなのでしょうか」

 石像を見上げながらアカメが興味深く観察する。
 脳内で様々な歴史的検証が今繰り広げられていた。

「歴史に埋もれた遺跡とは。スイフト爺が見たらさぞ歓喜して調査に乗り込んだじゃろうて」

 そう漏らしたクルペオの声にアカメは驚いた。

「スイフト爺? もしかしてそれは考古学者のサック・スイフト先生の事でしょうか」

 アカメの質問にクルペオも驚きつつ肯定する。

「そうじゃが。お主スイフト爺を知っておるのか?」
「ええ。学術都市アイーオの学院で教鞭を振るわれていたスイフト先生に私は師事していました」
「なんと。あの老人の教え子に会おうとは」
「スイフト先生はご健在で?」
「あの爺さんならピンピンしてるぜ! 今頃は五氏族連合フィフスの評議連に意見でもしてんじゃねえか」
「ははあ、さすが先生ですね。そこまでご出世されてるとは」

 シャマンは皮肉で言ったつもりだったのだが、アカメは額面通りに受け止めてしまったようだ。

「しかしスイフト爺の名で思い出すが、この遺跡も何となく我らのいたシャニワール近くの遺跡に雰囲気が似とるのう」
「そうだな。案外ここら近辺にも姫神がいるかもしれんな」
「姫神だって!」

 クルペオとウィペットの会話に今度はウシツノが強く反応した。

「ん? どうした?」
「あ、いや」

 実はシオリの正体に関しては未だシャマンたちには明かしていなかった。
 悪い者たちではなさそうだとは思っているが、周知されて増える危険を考えてのことであった。
 シャマンたちも別段シオリを怪しむ素振りを見せなかった。

「もしかしてお前ら、姫神について何か知ってんのか? だったら……」
「こっちだ!」

 そのシャマンの台詞を遮ったのは離れた位置にいたベルジャンだ。
 遺跡の入り口ではなく、どういうわけかひとり深い森の中へと続く小道の前で待っている。

「なんだ? おい、遺跡には入らねえのかよ」

 冒険者になった以上、遺跡内でのお宝発掘を夢見るシャマンは肩透かしを食った顔をしている。

「そこにはもはや何もない。多くのバカ者どもにより盗掘され尽くしているからな」
「あぐっ……」
「だがそれが目くらましになる。本当に護りたいものからな」

 ベルジャンに案内されたのは、とても小さな洞窟の入り口であった。
 あまりに小さく、少し離れれば大木の幹に隠れてしまうほど自然に溶け込んでいる。

「洞窟というよりこれは単なる亀裂にしか見えんな」
「人が好んで入る穴ではない」

 その狭い入口に身をよじりながらケンタウロスの戦士たちが入っていく。

「よし行こう」

 続けてウシツノとアカメが滑り込む。
 小柄なこの二人は難なく亀裂へと潜り込めたが、後ろで苦い顔をしている者が二名。

「これはきつそうだな」

 穴に潜り込んでいくクルペオとギワラに続き、大柄のシャマンと甲冑に身を固めたウィペットは顔をしかめながら後に続いた。

※この作品は小説投稿サイト「小説家になろう」にて掲載、鋭意連載中です。

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